「良い姿勢・正しい姿勢」をとることは、私たちにさまざまな良い影響を与えます。
ただ、この「良い姿勢・正しい姿勢」というのは実はとることがなかなか難しいものです。
ここでは本当の意味での「良い姿勢・正しい姿勢」について紹介するとともに「姿勢」がもたらすさまざまな影響について取り上げていきます。
悪い姿勢・正しくない姿勢がもたらすもの
まずは、悪い姿勢・正しくない姿勢だとどのような悪影響が起きるのか確認していきましょう。
大きく分けると、「体の痛み」「成長を妨げること」「歯の状態が悪くなる」「メンタル面への影響」「周囲からの評価」の5つに分けられます。
腰痛や肩こりの原因となる
悪い姿勢・正しくない姿勢がもたらす悪影響のなかでもっとも自覚しやすく、またもっとも実害が大きいのが体の痛みでしょう。
悪い姿勢・正しくない姿勢をとることは、腰痛や肩こりなどに繋がります。
人間の体には、「腰椎前弯(ようついぜんわん)」と呼ばれる状態にあります。
私たちの背骨がゆるやかなS字を描いていることを指す言葉です。
このS字のおかげで、走ったりジャンプしたりするときに体に走る衝撃が緩和されるようになっています。
しかしこの腰椎前弯がなくなってしまい、きれいなS字型のカーブを描けなくなると、衝撃を吸収することができなくなってしまいます。
この結果、腰椎前弯がきちんとあるときには「痛み」として知覚しなかったさまざまな行動が「痛み」となって出てくることがあります。
たとえば「座っていても腰が痛む」などです。
パソコンの前で仕事をしている人のなかで「やや前かがみになっていて、顔を前に突き出して作業をしている人」は多いのではないでしょうか。
このような姿勢というのは、腰に非常に多くの負担がかかっている状態です。
また、腰椎前弯を失わせる原因ともなります。
もう1つ取り上げておきたいのが猫背がもたらす健康被害です。
こちらの方は比較的よく知られている話ですから、聞いたことのある人もあるかもしれません。
人間の頭というのは意外なほどに重く5キロ~6キロ程度はあるといわれていて、この頭を人間の骨や肩が支えています。
猫背の状態だと、首が前に傾くなどして体が受ける負担が非常に大きくなります。
頭をきちんと支えるために多くの力が費やされるようになり、結果的に肩にも大きな負担がかかるようになります。
この負担は「肩こり」というかたちで出てきます。
バストが育つのを阻害する
「猫背の人は、バストが育ちにくい」という意見を耳にしたことのある人もいるかもしれません。
バスト部分に限ったことではありませんが、猫背になると血行が悪くなります。
血液を構成している「赤血球」は、各細胞に栄養と酸素を届ける非常に重要な役目を担っています。
細胞に栄養や酸素がいきわたらなければ、その部分は育つことができません。
また、肌トラブルなどが起きた場合も回復がずっと遅くなります。
猫背であるということは「バストの成長に必要な栄養素や酸素が届ける事が難しい状態にあること」といえるのです。
もっとも、バストの成長には「姿勢」以外の要素も多く絡んでいます。
遺伝もそうですし、ライフスタイルもバストの成長に関わってきます。
このため、「猫背を改善しさえすれば、だれでも確実にバストアップができる」とまではいえません。
ただ、猫背がバストのサイズアップを妨げる要因であることはたしかです。
また、猫背の姿勢は前かがみの姿勢に近い状態にあるので、バストに負担もかけます。
これにより、バストの下垂などが起きる可能性も高くなります。
歯並びが悪くなる
意外に思われるかもしれませんが、実は猫背は歯並びにも悪影響を与えると言われています。
上でもお話ししましたが、猫背の状態だと頭が少し前に突き出た状態になります。
もちろんほんの一時的に顔を前に突き出すだけでは顕著な変化はありませんが、日常的に「顔を前に突き出した状態」にあると、顎がその影響を受けてしまうのです。
頭をうまく支えられなくなるため、下あごに頭の重さが負担となってのしかかってきます。
下あごは顔を支えようとして前下方へと移動します。
そして下あご(下の歯)が上あご(上の歯)よりも前に出たかたちに変化してしまいます。
本来、上の歯は下の歯より前にあるものです。
この「正しい歯の位置」を維持することができなくなり、かみ合わせが悪くなり、歯同士がぶつかり合うようになってしまうことで歯並びも悪くなってしまうのです。
猫背が下あごの位置を動かし、歯のかみ合わせを変え、歯並びに悪影響を与えるというこの流れは、腰痛や肩こりなどのような「痛み」を伴うものではないため見過ごされがちです。
しかし歯並びの悪さは見た目もよくありませんし、食事のしにくさももたらします。
メンタル面に悪影響を及ぼすという説もある
「猫背はメンタル面にも影響を及ぼす」といわれています。
「歯」以上にイメージしにくいつながりかもしれませんが、これにもきちんとした根拠があります。
猫背の状態だと、深い呼吸をすることが難しくなります。
子どものころに多くの人が一度はやった「ラジオ体操」のなかで深呼吸をするときは、体を起こしたポーズでやっていましたよね。
猫背の状態では深く息を吸い込むことが難しく、浅い呼吸に終始するようになってしまいます。
「深呼吸をすればリラックスができる」といわれていますが、浅い呼吸は緊張感をもたらし疲労感を感じさせる一因になるとされています。
もちろん、「呼吸を変えればあらゆるメンタル面の不安は解消される」「猫背をやめて深呼吸を行うことで、重度の心の病もすべて回復する」とまではいえません。
ただ、悪い姿勢・正しくない姿勢を変えて正しい姿勢をとることで、いくらかでも気分が楽になる可能性はあります。
周りから受ける評価が悪くなることがある
ここまで紹介してきた悪い姿勢・正しくない姿勢がもたらす悪影響は、すべて「健康面に対する悪影響」でした。ここで紹介するものは少し毛色が違います。
人の感じ方はさまざまですが、「悪い姿勢・正しくない姿勢」は「良い姿勢・正しい姿勢」に比べると印象があまりよくありません。
猫背の人は「自信がないのだろうか」「暗く見える」「お年を召して見える」などの印象を持たれがちです。
対して、良い姿勢・正しい姿勢を取っている人の場合、自信や若さに満ち溢れ、生き生きとして見えることが多いといえるでしょう。
良い姿勢・正しい姿勢とはどのようなものか
このように、悪い姿勢・正しくない姿勢は、さまざまな面で私たちに悪影響を与えるものです。
では、「良い姿勢・正しい姿勢」とはどのようなものをいうのでしょうか。
これは、天井から1本の糸をつるし、それにつるされているようなかたちをとることだと解説されます。
まず、肩甲骨を引いて身を起こします。肩甲骨~肩を後部の方に引いて胸を起こします。
そのうえで、手を自然に下におろしてください。顎を少し引いて、おへその下あたりに心持ち力を入れてみるようにします。
正しい姿勢の場合、耳と土踏まずが一直線に結ばれます。
注意してほしいのは、胸を張りすぎないということです。
「背筋を伸ばしなさい」「良い姿勢・正しい姿勢をとりなさい」といわれたとき、私たちはついつい胸を前に突き出すようなかたちをとってしまいがちです。
しかしこれは、実は「良い姿勢・正しい姿勢」とはいえません。
意識するべきところはあくまで肩甲骨の位置であり、「胸を突き出す姿勢」ではありません。
胸を張りすぎる姿勢は体に負担をかけ、さらなる姿勢の崩れを呼んでしまいかねません。
良い姿勢・正しい姿勢を作ることで、体幹が鍛えられるようになります。
体幹がしっかりしている体というのは崩れにくく、若々しく見えます。
良い姿勢・正しい姿勢は一朝一夕で身に着けられるものではありませんが、気が付いたときに意識するだけで少しずつ状態は改善していきます。
悪い姿勢・正しくない姿勢がどんなものか知る
良い姿勢・正しい姿勢を身に付けるためには、悪い姿勢・正しくない姿勢がどのようなものかを知っておくことが重要です。
背中を丸め、顔を前に突き出したかたちでパソコンの前に座るのはやめましょう。
また、あぐらをかいたり横座りをしたりすることが習慣化しているのであれば、これも改めるべきです。
あぐらや横座りは、背中や腰に大きな負担をかけるものだからです。
寝る前にスマホなどをベッドで使っている人も要注意です。
これが習慣化すると、筋肉や骨に負担がかかるからです。
自分の日常の姿勢に目を向けて「姿勢が崩れていないか」「悪い姿勢・正しくない姿勢をとっていないか」を一度見てみるようにしましょう。
ちなみに、事故や出産などで骨盤が影響を受けて姿勢が崩れる場合もあります。
この場合は「自分で気を付けて治す」というだけでは改善しないケースも多いといえます。
「リハビリ」の領域になるものですから、必ず医師に相談して、必要な治療や指導を受けてください。
また、生活習慣によって姿勢が悪くなったという場合でも、痛みが生じする場合は、一度病院の診察を受けておくと安心です。