ハリ(張り)のあるバストは、非常に美しいものです。このようなバストを維持すること、またこのようなバストを取り戻すことは、多くの女性にとって夢のうちの一つだといえるでしょう。今回は「一度失ってしまったバストのハリ」を取り戻す方法について考えていきましょう。
なお、ここでいう「ハリのあるバスト」とは、「弾力があり、みずみずしく、しっかりと引き締まっていて、型崩れをしていない(あるいはしにくい)若々しいバスト」を指します。
そもそもどうしてバストのハリは失われるの?
まずは、そもそもどうしてバストのハリは失われるのかについて考えていきましょう。これにはいくつかの理由があります。
バストの構成の変化
まず一つ目は、バスト自体の変化です。
意外に思われるかもしれませんが、私たちのバストは年を重ねることでその構成が少しずつ変わっていきます。
本来、女性の体の特徴を示す人(以下、特記の必要がない場合は「女性」とします)の乳房は、乳児の栄養分である母乳を供給するために発達します。このため、閉経となれば乳房は生物としての役目を終えることになります。
胸の中には乳腺がありますが、母乳を供給するために発達した乳腺は、役割を終えると徐々に脂肪へと変化していきます。胸のうちの9割はもともと脂肪ですが、乳腺の変化によりさらに脂肪分が多くなるのです。
脂肪は非常に柔らかいもので、重力にも負けやすいものです。このため、脂肪が多くなった胸は徐々に垂れさがりやすくなり、ハリを失いやすくなるのです。
加えて、バストを支える土台となる胸筋もまた、加齢とともに細くなっていきます。支える土台も弱くなりますし、その上にあるバストも崩れやすくなり、ハリのあるバストを保ちにくくなっていきます。
コラーゲン量が低下していく
コラーゲンという単語は、だれもが一度は耳にしたことのあるものでしょう。特にスキンケアやボディメイクにおいては、ほぼ確実に耳にする単語のはずです。
コラーゲンは肌のハリを保つために必要不可欠なものです。しかしこのコラーゲンは、年齢とともにその量が減っていきます。
また、「質」の面でも悪くなっていくといわれています。コラーゲンを作り出す細胞として「繊維芽細胞」とよばれるものがありますが、30歳のころと40歳のころではその能力が半分程度にまで下がるという研究結果も出ています。
コラーゲンの質が悪くなったり量が少なくなったりすると、今までと同じハリを維持することができなくなります。その結果として胸が垂れてしまったり手触りが悪くなったりするのです。
バストを支えているクーパー靭帯が損傷する
バストのかたちを保たせているのは、クーパー靭帯と呼ばれている靭帯です。このクーパー靭帯がバストを支えることで、バストは上を向いた美しいかたちを維持することができるのです。
しかしこのクーパー靭帯は、いつまでもずっとバストを支えていることができるものではありません。さまざまな衝撃によってクーパー靭帯は損傷し、切れてしまったり伸びたりしてしまいます。
このクーパー靭帯の損傷は、決して珍しいものではありません。スポーツを行うときに胸をサポートするブラジャーをつけていなかったり、寝ているときに胸が左右に振れたりすることでもクーパー靭帯は切れてしまうのです。
スポーツをやっていたことのある人ならば「靭帯が切れるのは相当に痛いもの。自分はそんな痛みを味わったこともないので大丈夫だ」と思うかもしれません。
しかしクーパー靭帯の場合は、切れたところで痛みが走るものではありません。そのため、自分自身のクーパー靭帯が切れたことを把握することはできないものです。自覚するのは、胸のかたちが悪くなった状態に気づいてからでしょう。
妊娠出産、体重の増減
妊娠~出産、そして急激な体重の増減も、バストのハリに影響をもたらすものです。
妊娠~出産の時期に、バストは大きく育ちます。生物学上の胸の存在理由のもっとも大きなものは「子どもに乳を与えること」ですから、この時期に胸が成長するのは当然のことです。
そして妊娠~出産~授乳~卒乳を経て、女性の胸は徐々に元のサイズに戻っていきます。子どもに母乳を与えるために分泌されていた女性ホルモンの分泌量もまた、落ち着いていきます。
しかしバストの皮は、大きくなったときに一緒に伸びています。そのためバストのサイズが元に戻った場合、バストの皮が余ってハリを失ったように見える可能性が高いのです。
これは、急激なダイエットを行ったときにも見られるものです。「落ちやすい部位」「落ちにくい部位」はありますが、ダイエットを行えば、体全体から脂肪が落ちていくのはたしかです。
バストの脂肪も例外ではありません。急激なダイエットを行った場合、皮がその変化についていけず、皮が余ってしまうことがよくあります。
極端な食事制限や寝不足、ストレス過多な生活など
「○○を食べれば必ず胸のハリがよみがえる!」とまで断言できる食べ物はありませんが、食事がバストのハリに影響を与えることはたしかです。
極端なダイエットをしていると、人の体は生命維持を優先するようになります。
バストは子どもを育てるために重要な部位ではありますが、極端なダイエットをしてしまうと体は当面の生命維持を優先するようになるため、バストには栄養をまわさずにほかのところで使うようになってしまいます。
また、寝不足やストレス過多な生活も、バストのハリを失わせる原因となります。
私たちの体は寝ているときに肌や筋肉を癒し、育てます。
しかし寝不足状態にあると、このようなケアやフォロー、成長を促すことができなくなってしまいます。
「仕事が忙しすぎてどうしても睡眠時間を削らざるを得ない」ということは人生のうちで何回かありますが、そのときでも良質な睡眠をとるようにしてください。
また、ストレス過多な生活もバストのハリを失わせる原因となります。ストレス過多の生活は女性ホルモンの分泌を乱し、胸を育てたり美しく保ったりすることを妨害します。
「ハリのあるバスト」を維持するための方法
バストの構成の変化、コラーゲン量の低下、クーパー靭帯の損傷、妊娠出産による影響などは、セルフコントロールが極めて難しいものです。どのような人であっても加齢によってバストのハリが失われていくことは確実だからです。
ただし、ハリのあるバストを長く保っていられる方法は存在します。
まずは、運動です。
運動は体の老化を遅らせることができるものです。血行も促進されるので、バストを含む体のすみずみにまで酸素と栄養素を届けやすくなります。
加えて、胸筋を鍛える運動を積極的に取り入れることによって崩れにくいバストを維持することもできるようになります。運動はストレス解消にも役立つものですし、バストの老化を遅らせるという意味でも、ストレスを解消するという意味でも運動は非常に効果的です。
さらにいえば、過剰な食事制限を行う理由がダイエットにあるのだとすれば、食事量をあまり制限しなくても運動でしっかりカロリーを消費できる。そのため、食事の制限によるバストのやせ・ハリが失われることを防止できるというメリットもあります。
次に睡眠。
睡眠はストレスを解消するためのもっとも手軽な方法のひとつであり、体を育てる方法でもあります。良質な睡眠と長めの睡眠時間を確保しましょう。
22時~2時くらいはベッドで過ごすのがよいとされていますが、現在はこの時間帯でなくても良質な睡眠をとることができれば問題ないともいわれています。
可能ならば22時~2時、それが難しい場合は寝室の環境を整えて眠りやすい環境をと問えましょう。
正しい下着を着用することも重要です。
クーパー靭帯の損傷は日常生活のなかでも起こっています。しっかりと胸をサポートするブラジャーをつけることで胸は左右上下にふられにくくなり、日常生活のなかでのクーパー靭帯の損傷リスクを最小限に抑えることができるようになります。必ず自分のバストサイズにあったものを選びましょう。
また、スポーツをするときはスポーツ用を、そして寝るときには寝るとき用のブラ(ナイトブラなど)を使いましょう。
ハリのあるバストを復活させるには
日々の生活を改善することで、ハリのあるバストを長くもたせることはできます。
しかし、ハリのあるバストを取り戻す方法のなかで唯一確実なのは、美容外科による手術だけです。
バストマッサージや食べ物でアプローチしていくやり方もありますが、「確実に」「だれでも」「ハリのあるバストを復元する」は美容外科手術しかありません。
ほかの方法は、予防策に留まったり、確実性に乏しかったり、効果が実感しにくかったりといったマイナス点を持ちますが、美容外科手術ならば失敗しない限りはだれにでも確実に効果を示します。
ハリがなくなってバストが垂れ下がってきたということであれば、乳房吊上術を選びましょう。これは乳首の一を移動させたり乳房の皮ふを縫い縮めたりすることでバストの一をアップさせるものであり、若々しく垂れのないバストを取り戻すことができます。
また、ヒアルロン酸の注入による方法も有名です。ヒアルロン酸もまたコラーゲン同様、バストのハリに関わってくる成分です。これを物理的に胸に打ち込むことで、体の内側からハリを出すわけです。
この方法は乳房吊上術とは異なり、注射だけで施術がすみます。そのため、非常に手軽です。また、バストアップ効果も見込めます。
ただ、ヒアルロン酸注入による「ハリのあるバストを取り戻す方法」には永続性はありません。ヒアルロン酸は必ず体の内部に吸収されてしまうからです。
なお、私たちが医薬部外品あるいは化粧品として取り入れる「コラーゲン・ヒアルロン酸配合の化粧品」は、保湿効果はあるものの、「これを使えば肌のハリが根本からよみがえる」というものではりません。
このように、ハリのあるバストを「確実に取り戻す」方法は極めて限られています。しかし将来的に美容外科手術を受けることになっても、また受けた後でも、ハリのあるバストを保つ方法を続けていくことは非常に有用です。