女性の多くが悩んでいる肩こり。
肩こりを訴える女性の割合は、男性よりも倍以上多いという結果が国民生活基礎調査(厚生労働省)でも明らかにされています。
世帯員の健康状況、厚生労働省、国民生活基礎調査、統計Link
これは、女性と男性の筋力の違いもさることながら、女性のシンボルでもあるバストにも原因があると思われます。
肩こりからくる倦怠感や疲労感は大変不快なもので、酷くなると頭痛や吐き気・めまい・胃腸の働きの低下・不眠などを引き起こしてしまいます。
ここではブラジャーによる肩こりの原因と対策を詳しく解説します。
バストが大きいほど肩こりになりやすい?
バストが大きい人ほど肩がこりやすいといわれているのは事実です。
バストを支えるのは、肩から背中にかけての僧帽筋(そうぼうきん)と呼ばれる筋肉ですが、バストの重みはCカップの人でも500g程度あります。
大きい人ほど重量が増えるため、僧帽筋に負担がかかり緊張しやすくなり肩こりにつながりやすくなります。
バストサイズと肩こりの関係は、2012年に三重大学の笠井祐一教授がオンライン雑誌に発表した論文で明らかにされています。
題名は「Relationship Between Brassiere Cap Size and Shoulder-Neck Pain in Women」(ブラジャーのカップサイズと女性の肩こりの関係)。
論文の内容は、18歳〜77歳までの女性参加スタッフ339人を調査したところ、ブラジャーのカップサイズが大きくなるほど、酷い肩こりを訴える女性が多くなるというものです。
Relationship Between Brassiere Cup Size and Shoulder-Neck Pain in Women、Yuichi Kasai、Department of Spinal Surgery and Medical Engineering, Mie University Graduate School of Medicine, Japan、Link
私がお客様からよくご相談いただいたことも、バストが大きめの女性の「ブラを付けると肩こりが酷い、ブラを外すとホッとする」というブラジャーに対しての不満が多くありました。
現代は、大きく形の良いバストの女性は憧れの的ですが、一昔前の若い女性は「大きなバストは恥ずかしい」と考える人が多く、本来のカップサイズより小さめのカップでせっかくのバストを押さえつけ、なるべく小さく見せている女性が目立ちました。また、バストの大きさを隠すために猫背ぎみになり姿勢を悪くしています。
さらに、当時はカップのサイズや素材も現代ほど豊富ではなく、バストの大きな人ほど自分にピッタリなブラジャーを探すのが困難でしたから、さまざまな要因が重なり益々肩こりを悪化させる原因になっていました。
現在でも、バストが大き過ぎて恥ずかしいと思っている人は、小さめカップのブラジャーによってバストを押さえつけ、さらに姿勢を悪くして肩こりを重症化させている人が少なくないと思われます。
バストが小さくても肩こりはする
しかし、肩こりは大きなバストの持ち主だけとは限りません。バストの小さな人でも慢性的な肩こりに悩んでいる人もいます。
特に、日本女性に多い「なで肩」の女性は肩こりになりやすいといわれています。
なで肩とは、本来の鎖骨の位置(まっすぐ立ったとき、地面と鎖骨の角度が平行かやや上がった状態)より下がった状態の人をいいます。
なで肩は、女らしいシルエットをつくりますが、ブラジャーのストラップが落ちやすくストラップ調整が難しいなど、色々と苦労があります。
ストラップが落ちる度に直すのが嫌で、肩に食い込むほどストラップをきつくしている人もいますが、当然ながら食い込んだ部分が血行不良となるため肩こりにつながります。
肩こり軽減のためのブラジャー選びの3つのポイント
肩こりを軽減させるには、自分のサイズにピッタリ合ったブラジャーを着用することが大切ですが、ブラジャーを選ぶ際は以下の3つのポイントに注意しましょう。
自分に合ったカップサイズ
カップのサイズが合っていないと、バストの重みをしっかり支持することができません。
またバストのサイズは変化しますから、以前は正確だったサイズが現在は違っている可能性もあります。
ブラジャーから少しバストがはみ出しぎみになっている場合は、再度正確なバストサイズを測ってみましょう。
また、バストの大きい人はバスト全体をしっかり包み込み安定感のあるフルカップブラをおすすめします。
自分に合ったアンダーベルトのサイズ
アンダーバストのサイズは合っているのに、何だかキツイと感じることがありますが、それはブラジャーの形が自分に合っていないことやカップサイズが合っていないことなどが考えられます。
購入の際は必ず試着して、自分に合ったアンダーベルトのブラジャーを選びましょう。
バストが大きい人はアンダーベルトの幅が広いものをおすすめします。幅が広いほど支持力があるためバストが安定します。
ストラップ(肩紐)の調整
正しくブラジャーを着用し、最後にストラップの調整を行います。
ストラップは肩に食い込まないように指1本がスッと入る程度に調整しましょう。
ストラップは細いものよりも、バストの重みを分散させられる幅のあるものが肩こりを軽減します。
肩こり軽減のために心がけたいこと
ブラジャーによる肩こりは、自分に合ったブラジャーを着用することで徐々に改善されますが、肩こりの原因がブラジャーによるものだけでなく他にも色々な要因が重なっているケースもあります。
例えば、事務職の女性などに多い長時間のデスクワークによる同じ姿勢による血行不良・パソコンの使用による目の疲れ・冷え・運動不足・ストレスなど。
そのため、ライフスタイルを見直し、肩こりにならないよう心がけることも大切です。
正しい姿勢を心がける
人間は頭の重み(体重の約10%)を腹筋と背筋のバランスで支えています。
猫背になると頭が前に傾いている状態になるため、首や肩に負担がかかり肩こりを起こします。
正しい姿勢は肩こりの改善につながるだけでなく、姿勢の良さが女性を若々しく一層美しく見せます。
立っているときだけでなく、デスクワークのときも正しい姿勢を心がけましょう。
ストレッチなど適度な運動
女性に肩こりが多いのは男性に比べて筋力が弱いということも原因の一つです。
肩の筋肉を鍛えることで肩こり改善につながります。
筋力アップまではできないという人も、運動不足にならいように、日常生活の中にストレッチやウォーキングなどを取り入れましょう。
食生活の改善
無理なダイエットや喫煙は肩こりを悪化させます。
忙しくても朝食はしっかり摂ることが大切。体に必要なエネルギーを十分に摂取し規則正しい食生活を心がけましょう。
また、体を冷やす冷たい飲み物を控え、体を温める効果のある緑黄色野菜や根菜類・ショウガなどを意識して摂るようにしましょう。
良質な睡眠をとる
肩こりが酷くなると寝つきが悪くなったり、ぐっすり眠れなくなったりします。
そのため朝起きても疲れが取れず、肩こりが益々悪化するという悪循環に陥ります。寝る前はゆっくりお風呂(湯舟)につかり、体を十分温めて寝るようにしましょう。
寝る前の軽いストレッチやセルフマッサージも効果的です。
体を冷やさないように注意
女性はおしゃれを重視するため、少々の寒さを我慢する傾向があります。
体が冷えると血行が悪くなるため、栄養が十分に届かなくなったり筋肉が固くなったりすることで肩こりに直結します。
できるだけ肌の露出の多い服装は避け、常に体を冷やさないように心がけましょう。
また職場でも、冬の冷えだけでなく夏場のエアコンからの冷えにも注意して、冷気が直接肩や背中に当たらないようショールやカーディガン・ひざ掛けなどで体を守りましょう。
「肩こりは万病のもと」ともいわれる時代です。
肩こりが悪化すると肉体面の辛さだけでなく、イライラや集中力の欠如など精神面にも悪影響を及ぼします。
さらに女性の大敵である「老け」にもつながってしまいます。
「この肩こりはもしかしたら、ブラジャーのせい?」と心当たりのある人は、すぐにご自分のバストサイズを正確に測ってみることをおすすめします。
そして、自分に合ったブラジャーの着用はもちろんのことですが、時間はかかっても、肩こりしにくい体質への改善や生活環境づくりを心がけていきたいものです。